■ペット・ロスとは?
■コンパニオン(伴侶)としての動物
■ペット・ロス時にみられる心や体の変化
■悲しみからの立ち直りのプロセス
■医療に関して後悔しないために
■高齢者にとって動物を失うということ
■ペット・ロスに年代(年齢)、性別による違いはあるか?
■ペット・ロスの悲しみから立ち直るには?
■周囲の人々のフォロー(何ができるか、どう接するべきか?)

 共に暮らした動物に死に伴って経験する可能性のある心と体の変化、そして悲しみからの一般的な回復過程についてお話しします。ここでお話しすることは、あくまでも一般論なので、実際には個々のケースにより悲しみの程度や持続期間は異なります。しかしながら、”ああ、こんな風に感じるのは当たり前なのだ”、”こんなにいつまでも悲しくて、涙が出るのは当たり前なのだ”ということが分かっていれば、自分に対して悲しむことを許すことができ、少しは気持ちが楽になるのではないかと思います。また、自分の周りに動物を亡くして悲しんでいる人がいた場合に、その人たちを優しく受け入れる気持ちを持つことができるのではないでしょうか。
 ここにあげるすべてのことを一人一人が必ず経験するわけではありませんし、その程度や持続期間にも差がみられますが、どれもペットを亡くしたことに対する正常な反応であり、通常、時間の経過と共に和らいでいきます。
多くの変化が見られますが、大まかには、1.行動、2.身体的感覚、3.感情、4.認識・知的活動に関連したものに分けることができます。

1. 行動
泣く、睡眠障害、食欲不振、過食、亡くなった動物の夢をみる、亡くなった動物との思い出の場所を訪ねる(例えば、公園やいつもの散歩コースを歩いたりする)、亡くなった動物の遺品を身につけたり、持ち歩く(遺骨や灰の一部を持ち歩くこともあります、しかし逆に亡くなった動物を思い出させるものや場所を回避することもあります)、極端に活動的になる(忙しいと気分が落ち着く)、ぼーっとする(正常の思考能力がないような無意味な行動をとったり、何もせず空を見つめぼーっとしたりすることがあります)、ため息(これは身体的感覚でみられる息切れと密接な関係があるとされています)。

2. 身体的感覚
胃の痛み、悪心、息切れ・息苦しさ、口渇感、疲れやすい、体の痛み、関節のこわばり、筋肉のこりや筋力低下。(私の患者さんの中に軽度の難聴になった方、尋麻疹が出た方がいましたが、どちらも数週間で回復しました)

3. 感情
孤独感、怒り(時として、怒りは獣医師や動物病院のスタッフ、健康な動物を飼っている家族、さらには動物の命を救ってくれなかった神様に対して向けられることもありますが、自分自身に対する怒りが生じることもあります)、罪の意識・自責(自分の管理が悪かったのではないか、もっと早く気がついていれば、もっと大切にしておけばよかったなど)、沈鬱、感情鈍麻(外界の刺激に対しての感受性が低下する、あるいは感じなくなることもあります)、解放感(動物が苦しんでいた場合など、あーやっと楽になれたという気持ちになる場合があります)自尊心の低下、困惑、絶望感。

4. 認識・知的活動
否定(動物の死を現実のものとして受け入れることができず、悪い夢でも見ているような錯覚に陥る)、混乱(識別、判断能力が低下し、人の言っていることを正確に判断できないことがある)、集中力の欠如、亡くなった動物に関連した幻覚・幻聴、実際にまだ動物が生きているように感じる、亡くなった動物のことばかり考える、亡くなった動物の死んだ時の事を考えたり話したりする、時間が長く感じられる、日常生活における活力低下、人に会いたくない(家に引きこもる)
 ここで挙げたこと以外にも、魂の存在や死後の世界について考えたり、動物の死に関して意義ある解釈をしようとしたりすることもあります。様々な反応が多様な組み合わせで認められますが、基本的な生活に支障を来すようなものは比較的早期に改善傾向がみられます。しかしながら、2か月以上経過しても状態が変化しないような場合には、専門家に相談する必要があります。

 
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