■ペット・ロスとは?
■コンパニオン(伴侶)としての動物
■ペット・ロス時にみられる心や体の変化
■悲しみからの立ち直りのプロセス
■医療に関して後悔しないために
■高齢者にとって動物を失うということ
■ペット・ロスに年代(年齢)、性別による違いはあるか?
■ペット・ロスの悲しみから立ち直るには?
■周囲の人々のフォロー(何ができるか、どう接するべきか?)
 次にペットを亡くした悲しみからの立ち直りのプロセスについて少しお話しします。通常、このプロセスは次の4段階に分けられ、各段階を通過することにより、悲しみから徐々に解放されていきます。
第1段階 ショック、事実の拒否
第2段階 極度の悲しみ、絶望
第3段階 回復期
第4段階 正常な生活への復帰

 少し大げさに見えるかもしれませんが、難しく考える必要はありません。今までの自分の経験を思い出してみれば、”なるほど”と納得できる内容だと思います。悲しみから回復するためには、それぞれの段階を通過しなければならず、各段階毎に乗り越えなければならないことがあります。
 第1段階では動物の死を現実のものとして受け入れるということが最も大切なことです。特に事故などのように死を全く予期していなかった場合は、”まさか、そんな”という気持ちが強く、死を素直に受け入れることがとても難しく、また、受け入れるまでに時間がかかります。
 第2段階では悲しみの気持ちを素直に表現する必要があります。この段階で自分の気持ちを十分に開放することができないと立ち直りがうまくいかなくなることがあります。周囲の人達の理解がなかったり、自分はおかしいのではないかと思ったりすると、感情を押し殺してしまったり、自分の気持ちを素直に表現することをやめてしまうことがあるので要注意です。
 第3段階の回復期では、動物のいない環境に適応することが課題となります。実際に動物がいなくなるまでは、その動物が果たしていた役割や自分にとってどのような存在であったのかということが十分に理解されていないのが普通です。動物がいなくなって、ぽっかりと大きな穴が開いてしまった生活を立て直していかなければなりません。たとえば、いつもの散歩コースを一人で歩けるようになることがこの段階の目標です。散歩の途中で毎日出会う仲間から”あれっ、今日は一人ですか?”とか”しばらくお見かけしませんでしたね”と声をかけられるかもしれません。その時はどうぞ愛する動物を亡くしたことを話して下さい。少しずつ動物のいない生活を現実のものとして受け入れていくことです。
 第4段階は一歩進んで、亡くなった動物の居場所を自分の中につくることができるようになることです。つまり、亡くなった動物のことが思い出という形になっていきます。この時期になると、新しい動物を飼うことに対する罪悪感はほとんどなくなり、”新しい動物と一緒にくらしてみようかな”と思えるようになります。もちろん、亡くなった動物のことを忘れるわけではありません。
 ここに示した4つの段階はそれぞれを明確に分けることはできません。オーバーラップしたり、少し逆戻りしたりしながら回復していくのです。 
 悲しみの深さとその持続期間は、動物の年齢、その動物との繋がりの強さ、一緒に暮らした期間、予期せぬ死であったのか、ある程度覚悟してしていたのか、安楽死であったのかなど様々なファクターにより影響を受けます。また、状況が似通っていたとしても、考え方や感じ方は各人異なるため、悲しみの深さや持続期間は人それぞれです。比較的早い時期に次の動物との生活が始められる人もいれば、1年以上経っても動物の死を過去の事としてとらえられない人もいます。後者に属する人々も、時間はかかりますが徐々に回復し、愛する動物が”死んだ”という事実よりも”生きた”という事実の方が大切であると思えるようになります。つまり、その動物と暮らしたことをよい思い出とすることができるようになります。
 ここでは動物が亡くなった後のことについてお話ししましたが、愛する動物が亡くなった時、”この子と一緒に生活してよかった”と思えるように、”今”を大切に、悔いなく過ごして頂きたいと思います。 
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