■ペット・ロスとは?
■コンパニオン(伴侶)としての動物
■ペット・ロス時にみられる心や体の変化
■悲しみからの立ち直りのプロセス
■医療に関して後悔しないために
■高齢者にとって動物を失うということ
■ペット・ロスに年代(年齢)、性別による違いはあるか?
■ペット・ロスの悲しみから立ち直るには?
■周囲の人々のフォロー(何ができるか、どう接するべきか?)
 動物と共に暮らしている人々は家族の中で動物をどのように位置づけているのでしょうか。高齢者を対象に行ったアンケートでは、自分の子供という答えが最も多く、次いで仲のよい友達でした。動物は唯一の話し相手であり、自分が面倒を見る相手であり、自分を頼りしてくれる存在であり、温もりを与えてくれる存在なのです。子供達が独立し、夫婦だけになった場合、配偶者を亡くし一人暮らしになった場合には、動物の果たす役割はさらに大きくなるのではないでしょうか。そして、その分その動物を失った時の落胆も大きいと考えなければならないでしょう。
 高齢者の場合、配偶者の有無にかかわらず、共に暮らしている動物に対する愛着度が非常に高いことが多いのです。動物と共に生活しているすべての人に共通することではありますが、特にリタイヤ後の高齢者の場合、一緒に暮らす動物によって一日の生活のリズムが維持されていることも多々あります。たとえば、食事の世話をしたり、体をきれいにしたり、また、犬の場合であれば散歩に出かけたりといったことにより生活のペースが保たれています。さらに、動物病院に行ったり、散歩の途中で新しい友人ができたりと動物を介して社会的な活動の幅が広がることもあります。したがって、高齢者の場合、動物を失うことと同時に生活のリズム、社会的な活動に変化が生じる可能性が他の年齢層に比べ大きく、動物を失うことに伴う肉体的、精神的なダメージが大きくなるのではないかと思われます。
 年齢が高くなる程、身近で大切な人を亡くした経験が多くなるはずです。一緒に暮らしていた動物がすでに亡くなった配偶者や家族を思い出させる存在であった場合、動物を失った悲しみだけでなく、過去の喪失体験と重なり自分の死に対する恐れや不安感を抱くこともあるでしょう。
老いるということは、多くのものを失うことでもあります。体力の低下や記憶力の低下は多くの高齢者にとって避けられないことであり、経済的にも無理ができなくなります。高齢者の多くは、現在共に暮らしている動物が亡くなった後はもう動物は飼わないと言います。この言葉の裏には、本当は飼いたいが体力的、経済的、さらに自分の余命を考えるととても最後まで責任が持てない、という思いが隠されていることも事実です。何かあった時に助けてくれるシステムがあれば、動物を飼いたいと思っている人は多いのです。動物を残して他界してしまった場合の動物の処遇、経済的に余裕のない高齢者が飼育している動物の医療費の問題など個人ではどうにもならない問題です。世界一の長寿国日本、高齢者が安心して動物と暮らせるような環境整備が望まれます。
 
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